2011年10月27日木曜日

北杜夫氏死去

北杜夫氏が亡くなった。



本名は斉藤宗吉、歌人斉藤茂吉氏の次男で、兄が斉藤茂太さん。
84歳、僕より32歳も年上だ。

氏の本は、中学・高校・大学とずっと読み続けた。
夢中になって読んでいた当時は、斉藤茂吉も斉藤茂太も興味はなく、ただただ面白く、少しだけ「大人の世界」を垣間見れて楽しかった。
北杜夫と言えば、遠藤周作と並び称される、「純文学」と「軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)なエッセイ」を『同時に』書く作家として有名だ。

色々と評伝が出るだろうが、僕にとっての北杜夫はこのあたりである。



斉藤茂吉と言えば、「赤光」である。

で、斉藤宗吉と言えば、僕にとっては、何と言ってもまずは、「どくとるマンボウ青春記」である。
僕は、中公文庫で読んだ。
挿絵が好きだった。
これ、何回読んだだろう。
100や200ではないはずだ。
本に出てくる「警句」の色々な所で使った、意味もなく、高校のころだったなぁ。
旧制高校(今の東北大学)時代の、氏の日常を綴ったエッセイで、これが学生というものなら、大学生になってもいいな、と思った。
今の中学生なら十分読めると思う。
ただし、すっごくかぶれてしまうの要注意である。





言わずと知れた、「航海記」である。
今も手元にあるが、読みすぎて本がボロボロである。
僕の生まれた翌年(60年)、水産庁調査船の船医として南洋から欧州をめぐった体験記である。
僕が「外国」に触れた、最初の本でもある。
ものすごく面白くて、何度も何度も何度も何度も読んだ。
お気に入りのページは、ドッグイヤーしたものだ。

※当時は「ドッグイヤー」なんて言葉も知らなくて、「本を折るのが嫌」だったけど、「ここおもろい」と思って、素直に折っていた。

※人を形成する環境について
例えば、村上春樹氏は、幼い頃から外国文学の本が家にあり、読み耽っていたそうだ。
外国文学に関わる人にはやはり、子供の頃からそのような環境があったことが、色々な本を読むと分かる。
日本文学に関わる人は、やはり本も含め、「日本」が近かった人が多い。
ミュージシャンの二世って、「お前じゃなくてオヤジ(もしくはオフクロ)がすごかったんであって、お前何?」って、ケースがものすごく多いけど、これも育った環境が「ミュージック」なんだろうから仕方ない。
染み付いてるからね。
で、染み付き方がうまくドストレートだと案外よかったりする。
誰とは言わないけど。





純文学だと、まずはこれだ。
三島由紀夫が「戦後に書かれたもっとも重要な小説の一つ」と評す、楡家の人びとである。

※北氏が三島由紀夫と交流したことをユーモアたっぷりに著した本も読んだ。
何だったか思い出せない。
どくとるマンボウ「なんとか」なんだけどな。

えっと、で、楡家の人びとであるが、これ、純文学なんだけど「かなり」面白い。
脳病院を築いた祖父らをモデルにした(たしか)一家3代の物語なんだけど、何と言っても「登場人物が一人ひとり『生きていて』、その息遣いが聞こえるよう」な感じなのだ。
この本、何年にもわたって読んでるけど、その度に「泣ける」箇所が違って、それも面白い。
若い世代に読んで欲しい本だ。
長いけど、一気に読めると思う。
あっ、「にれけのひとびと」ってよみます。





これも、よく読んだ。
※今も、時々読む。
この本の面白さをどのように表現してよいのかよく分からないのだけれど、まさに「冒険」である。
途中、「かび臭い」インスタントラーメンを煮るところや、アゲマンの記述なんかがあって、「はぁ?」と思うけど、これがいいんだ。
ものすごく夢中になって読んだことを思いだす。





シートン動物記もファーブル昆虫記もちょっと読んで「全然面白くなくて途中放棄」だったけど、この昆虫記は読んだ。
これは「文学」だ、と思って読んだら読めた、と記憶している。
何というか、「虫に対する愛情」があるんだよね。





芥川賞を受賞した、「夜と霧の隅で」。
たしか中学生の頃読んで、マンボウとのギャップがありすぎて、全然面白くなくて弱ったことを思い出す。
今なら、「面白くなければ即、読むのを中止」であるが、中学生の頃は「面白くない自分が未熟なのだ」と真剣に思っていたので、「面白くなるまで読もう」と、かなり力を入れていたのだろう。
今読むと、面白いかな。
ちょっと読みかえしてみようかな。



こちらも、同様だ。





これ以外にも、「高見の見物」(ゴキブリが主役のユーモア小説。って書くと誤解されそうだな。「面白い人間たちをゴキブリの目から見た人間観察ユーモア小説」の方がいいかな。)とか、「奇病連盟」とか好きだった。

氏の本は、多分20~30冊持っていたはずだ。
※実家にあるはず。
読み返そうかな。

ご冥福をお祈りいたします。
ありがとうございました。

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